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2010年 07月 18日
露出の話 2/3
露出の話の第二回目、今回は” 光の反射率と露出の関係について”です。
“難しそう~”
”面倒な話は嫌い!”
と言う声が聞こえてきそうですが、露出を説明する上で最も重要な部分となります。
これが理解できないと、次回の”測光”の部分では話が理解できなくなってしまいますので、なるべく判り易く説明したいと思います。
長文ですので、覚悟して読んでください。


皆さんは、こんな経験をしたことがないでしょうか?

白い雪を撮ったのに、雪が白くない???
露出の話 2/3_c0135535_1745345.jpg


黒い壁を撮ったのに黒くない???
露出の話 2/3_c0135535_1754345.jpg


実はこれは色の反射率を知らないと当たり前におこる現象です。

カメラは黒いものや白いものを撮る事が苦手なのです。
カメラが得意とするのは18%グレーという色で、この色だけはちゃんと再現するように造られています。
18%とは光の反射率を意味し、100の光を受けたら82を吸収し18を反射するという意味です。ちなみに、白は反射率97~100%、黒は反射率0~3%といわれています。
夏の日差しの強い時、黒い服を着ていると黒は光を吸収するので服の中は暑くなり、白い服を着ていると光を反射して暑さを感じ難くなる事を考えると判り易いでしょうか?
光の反射率18%を再現できるように造られているカメラは、これよりも反射率の高い色(白等)を撮った場合には、“明る過ぎる!”と判断してグレーに近づけるように暗く写します。逆に反射率が18%よりも低い色(黒等)を撮った場合には、”暗過ぎる!”と判断してグレーに近づけるように明るく写します。これが原因となって上の写真のような現象を起こさせるのです。
意外と思われるかもしれませんが、これは高価な100万円のカメラであっても、2~3万円の安価なコンパクトカメラでも同じです。そしてフィルムカメラでも、デジタルカメラでも同じです。
「私のカメラは高価なので、白でも黒でもちゃんと写せるよ!」と思っている方、それは大きな過ちですので気を付けてください(笑)
納得し難いかもしれませんが、カメラとはそのようなものだと理解して下さい。

では、18%グレーってどんな色でしょうか?
18%グレーは下の絵のように白と黒が同じ面積ものを混ぜ合わせて平均的にぼかした色で、下のような色になります。
※18%グレーの元の色は、下のようなマス目状である必要はありません。白と黒の面積が同じであれば、例えば左右対象な白と黒でも構いません。
※平均的なぼかしに関しては、私はPhotoshop Elements 6.0を使い、写真を開いて、フィルタ→ぼかし→平均 を使い作成しました。

18%グレーの元の色 
露出の話 2/3_c0135535_1785518.jpg

 
18%グレー   
露出の話 2/3_c0135535_1773991.jpg


この18%グレーの色は、どんなカメラで撮っても同じ色で再現するはずです。
そして、この18%グレーのヒストグラムを見てみると以下のようになります。
露出の話 2/3_c0135535_1710164.jpg


ヒストグラムの真ん中に一本だけある事が判りますよね?
前回の露出の話1/3で、標準露出は真ん中が中心の裾広がりの山になると説明をしました。
18%グレーは標準露出の中心にあるため、この色の持つ光の反射率がカメラの基準となるわけです。
この色を基準として総てのカメラが造られているため、この光の反射率18%の色はどのカメラで撮ってもそのまま再現するわけです。



それじゃ、白や黒を撮影する場合にはどうすれば良いの?という疑問がわいてきますね。
そのためには露出補正を理解する必要がなります。

私のブログでは良く撮影レシピの中に出てくるのでお馴染みの方も多いかと思います。
一般的には、黒の場合、マイナス2~マイナス3EVの露出補正をすれば黒を再現できます。
逆に、白の場合には、プラス2~プラス3EVの露出補正をすれば白を再現できます。

マイナス1EVとは絞りを固定(F5.6等)とした場合には、シャッタースピードを半分にする事になります。例えば露出補正無しの時に1/250秒のシャッタースピードであれば、マイナス1EVの露出補正をするとシャッタースピードは1/500秒となります。
つまり、露出補正無しの時と比べ、フィルムや撮像素子に当たる光の量が半分となるので写真が暗くなるのです。そして、マイナス2EVの露出補正の場合には、更にシャッタースピードは半分になって、1/1000秒となり、露出補正無しの時と比べ、1/4のシャッタースピードとまります。
また、シャッタースピードを固定(1/250秒等)としてマイナス1EVの露出補正を行った場合には、露出補正無しの時に絞りがF5.6であれば、マイナス1EVの露出補正を行うと、絞りはF8.0と絞られて、光の入る面積が半分となりますので、光の量も半分となり写真は暗くなるのです。
写真が暗くなると言うと聞こえが悪いですが、写真を暗くすることで黒い色を再現し易くなるのです。


プラス補正の場合には、マイナス補正の場合と逆となり、絞りを固定とすればシャッタースピードを遅くし、シャッタースピードを固定とすると絞りを開いてそれぞれ光の量を多くして明るい写真とし、結果として白い色を再現し易くなります。

下の写真は、白い紙を使い、露出補正無し・プラス1EV・プラス2EVで撮った場合と、黒い紙を使って、補正無し・マイナス1EV・マイナス2EVでそれぞれ撮ったものです。
露出補正無しの場合は、かなりショッキングな結果で両方ともグレーとなっており、どちらかというと白い紙の方が濃いグレーとなる結果となってしまいました。
そして、白い紙はプラス2EVした時にほぼ白く表現され、黒い紙はマイナス2EVした時にほぼ黒く再現されていることが判ります。
白を白く、黒を黒く、というようにちゃんと色を再現するような露出の事を"適正露出"と言います。
前回のハイキーで撮った桜や、ローキーで撮ったトラック等は、単にハイキーやローキーで撮ったのではなく適正露出で撮った事を意味しています。
露出の話 2/3_c0135535_17113650.jpg


この結果を見ただけでも、露出補正の必要性を感じて頂けると思います。
つまり、光の反射率を考慮しながら露出を決めないと正しい色を再現する事が出来ないという事です。

参考のため、それぞれのヒストグラムを載せておきます。
白も黒も露出補正無しの場合には18%グレーに近いヒストグラムになっていることが判ると思います。
白い紙:露出補正無
露出の話 2/3_c0135535_195872.jpg


白い紙:プラス1EV
露出の話 2/3_c0135535_19582392.jpg


白い紙:プラス2EV←ヒストグラムを見ると右端にちょこっとだけ余裕があり、まだ完全に白ではありません。
露出の話 2/3_c0135535_19583622.jpg


黒い紙:露出補正無
露出の話 2/3_c0135535_19584986.jpg


黒い紙:マイナス1EV
露出の話 2/3_c0135535_1959381.jpg


黒い紙:マイナス2EV←ヒストグラムを見ると左側に"白い紙:プラス2EV"以上に余裕があります。黒っぽくは見えますが、黒として写すにはまだまだ補正が必要です。
露出の話 2/3_c0135535_19591984.jpg



それでは、他の色の反射率ってどうなっていて、どのようにして撮ればいいのでしょうか?
まず、18%の反射率を持っている色は18%グレーだけではありません。例えば植物の葉の緑、順光で撮った空の青、日本人の肌色等が18%の反射率を持っていると言われています。
つまり、これらの色はそのまま補正無しで撮ってもカメラは色を再現してくれます。
しかし、植物の葉の緑については、春の若葉の時は明るい緑なので反射率は18%よりも大きくなります。また、深緑と言われるような濃い緑の場合には反射率は18%よりも小さくなりますので、一概に色だけで反射率を判断すると誤った判断をする場合があります。
私は色を見て頭の中で彩度を落としてモノクロに置き換えるようにしています。

下にいろいろな色を載せました。
そして、その下が彩度を落としてモノクロ化したものです。

カラーのままの色
露出の話 2/3_c0135535_17124872.jpg


彩度を落としてモノクロ化
露出の話 2/3_c0135535_17131036.jpg


仮に、右下のグレーが18%の反射率であると仮定すると、上の段の5枚はグレーが濃く、下の段の4枚はグレーが薄い事が判ります。
この濃さを利用して、濃い場合には黒に近づくためにマイナス補正を、薄い場合には白に近づくためにプラス補正をそれぞれ加えます。
おおよそですが、下記のような補正値となります。つまり、例えば上の段の中央の茶色ははマイナス1.5EV、下の段中央の水色の場合にはプラス0.5EVを露出補正をしてあげると、見ためと同じ色が再現することとなります。
露出の話 2/3_c0135535_17133345.jpg


全ての色の補正値を覚える必要はありません。18%グレーだけを覚えて、それよりも濃い色なら徐々にマイナス補正を大きくし、明るい色であれば徐々にプラス補正となる事だけを覚えればOKです。
これは頭の中だけで考えるのではなく、実際に経験して経験の中で覚えていくことが重要な事となります。


でも、今日の話は画面の中が一色で表わせた場合の話。実際に写真を撮るときにファインダーを覗くとたくさんの色があるのだけど、そんな時はどうしたら良いの?という根本的な疑問がわいてきますね。

今までの説明から、黒っぽい色を写す時はマイナス補正、白っぱい物を写す時はプラス補正。
ということは、白と黒を同時に写すことは出来ないのでしょうか?

上で載せた、白い紙と黒い紙を露出補正を変えながら撮った写真に絞りとシャッタースピード(SS)を載せました。
※ISO80、絞り優先AEを使いF2.0、三脚に据え付けて撮影しています。

露出の話 2/3_c0135535_11173567.jpg


露出補正無しの時は、白い紙の場合のシャッタースピードは1/160秒、黒い紙の場合には1/8秒と大きく違いますが、2EVの露出補正を加えた後には、白い紙の場合には1/50秒、黒い紙の場合には1/40秒と殆ど同じ値を示しています。
黒い紙の場合には紙質により若干の光の反射が見られ、ヒストグラムを見ると、左端までに余裕がありましたので、本当はシャッタースピードはもっと早くして光の量を減らした方が適切と思われ、1/50秒で撮ればもっと黒く写るはずです。

つまり、白い紙でも、黒い紙でも同じ条件(絞りとSSが同じ)で撮影できる事が判ると思います。
よって、一つの色を適正露出で測り、撮影することで他の色も正しく再現できる事になるのです。



では、ファインダーの中にあるたくさんの色をどうやって測れば良いのか?
それについては、次回(次週)の測光で説明をしたいと思います。

by chihiro426c3 | 2010-07-18 12:06 | 露出の話


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